ロミオvsジュリエット

この世は舞台、男も女もみな役者(お気に召すまま 2幕7場)


せっかくだからロミジュリから引用したかったんだけどね。
以下ネタバレ考慮してません。

 タイトル通りシェイクスピアロミオとジュリエットを元にした恋愛アドベンチャーゲームです。最初ロミジュリの世界観を元にしてるのになんでシェイクスピアでてるんだって思った節はありました。いやどうする気なのかなって。なんで生みの親でてんだと。ですが真相見てめちゃめちゃ納得しました。良く絡めたな。本当にシェイクスピアがことの発端で、私たち(キャラクター)はシェイクスピアの手の上で踊らされてたんですよ。今回もシェイクスピア及びクインロゼの思惑にまんまと引っかかってしまった気持ちです。では行ってみよう。

 



【あらすじだよ】
ヴァンパイアと人間が争う街、ヴェローナを舞台に、境界に位置しもっとも抗争が激しい地、キャピュレットの女主人公がヴァンパイア・ハンターを目指している。そんな中、ヴァンパイア・ハンター認定試験の前にヴェローナ大公によってヴァンパイアとの融和政策が発表される。賛成派と反対派が入り乱れる中、主人公が迎えた結末とは。


【全体感想】
 システムの話からします。いつも通り絶妙に遅いです。スキップはそこそこ早かったし、次の選択肢までジャンプできるので周回プレイには困りません。しかし、次のセリフに行くまでのスピード(っていうのかな?)が遅い。読み込みが長い。最悪セリフのボイスが流れない(一回巻き戻せば流れる。)。個人的にはボイス結構飛ばしちゃうのであれなんですけど、ちゃんと最後まで聴く人は少し面倒かもしれないです。それにしてもちょっともたもたしてる感じが長時間プレイには堪えました。慣れてますけども。あとは安定の謎のミニゲーム。今回はマリオ(に良く似たなにか)でした。マリオだけど、マリオじゃない。
 シナリオは本当におもしろかったです。原作知らなくても全然楽しめます。かの有名な「ああロミオ」も聴けます。言葉を変えて何回も聞けます。そのあとの「月は不実」みたいなやりとりも結構やってくれました。ですがこのセリフに至っては、有名なセリフだからっていうのがあるからだと思うんですが、本当に多くて、ダレる人はダレるかもしれません。まあロミオルートでしか聞けないのでここで大量摂取しとくのもアリとは思います。他にも結構細かいところで原作のセリフを入れてくれるてるので、一回原作に目を通しておくとより楽しめるのかなって感じ。それ以上に結構驚いたのが、原作だけじゃなく、ロミジュリ研究論文等々で取り上げられてる解釈も取り入れたキャラクター作りというのがされていて、そこに一番慄きました。例えばロミオ。vsのロミオは文学・演劇オタクなんですけど、多分この設定になった理由って、原作のロミオが第一幕で文学的恋愛をしているってところからきてるんだと思うんですよね。次いでマキューシオ。彼は自分で道化、ロミオの引き立て役って言ってるんですけど、これも劇中では言われてなくて、研究や解釈で言われてるんですよね。そんなメタ発言ありかよ。こんな感じの設定が多くて、きちんと上辺だけじゃなくより掘り下げてキャラクターを作っている感じがとても良かったです。あとは全体的にやっぱり劇を意識しているのか、シーンの割り方もact.1、act.2と進んでいったり、キャラクターが「今から演じなくてはならない」とか「喜劇を演じるなどごめんだ」などの発言が多かったです。あとこれは少し考えすぎかなって思ったんですが、回想シーンがメタシアターを意識してるのかなって感じがしました。考えすぎだったらすいません。
 あと今回印象的だったのが、各キャラクターベストエンディングがないことです。この結末が最良、って決めるわけでなく、こういう結末もある、って感じのスタンスだったのが、演劇っぽくていいなあって思いました。それと恋愛面ですけど少しアダルティ。でもロゼ作品の中では結構珍しく恋愛の過程が詳しく描写されているし、主人公が相手を好きになってく過程が丁寧な印象を受けました。アダルティシーンも、こう、入れときゃいいんだろって感じではなく、必要な流れで入れてくれた印象。この辺は好き好きだと思いました。全体を通してみると私は好きな感じのゲームでした。わーい。



【人物別感想】
ジュリエット=キャピュレット
本作のヒロイン。ヴァンパイア・ハンター見習いです。昔両親をヴァンパイアに殺された為、ヴァンパイアを憎んでいる。両親はヴァンパイア・ハンター兼ヴァンパイア研究家で、ヴァンパイアに銀の銃弾が効くことを発見した人物でもあります。その為、両親が襲われた事件を世間は銀の銃弾事件を呼んでいるとか。原作が若さと勢いの物語のせいか、比較的他のロゼヒロインよりも精神年齢等々が幼め。いい意味で子供っぽい。メンズたちが結構立場が〜とか幸せになっちゃいけないから~とかいうタイプが多かったんですけど、そんなもんしるかーっ!お前が好きだーーっ!幸せにしてやる!!って感じで男に迫っていて最高だった。基本どのルートでも押せ押せな感じで個人的には好きなタイプでした。かわいい。若さisパワー。子供なのに家督を負わなきゃなんないせいか、責任感と感情に左右されてる感じが少女っぽくて良かったです。そのくせ攻略対象にはとんでもない包容力を発揮するから純粋にずるい。こんなんみんな好きになっちゃうよ。

以下やった順です



ロレンス=グロブス
 私は知ってるんだ!!QuinRoseというケーキバイキングはこの手の塩こんぶ茶が絶品だってことを!!本来ならケーキを何個か食べた後に飲むべきものなのはわかっている、しかしここの塩こんぶ茶は絶品なんだ!そんな男です。他の男たちをやってから攻略するべきなのはわかっていたけど止められませんでした。
 ロレンスは教会の幹部でヒロインの上司です。ストイックで人付き合いが不器用で平民出身ではあるが実力一本でのし上がってきた実力派です。は〜い、ロゼヒロインが好きなやつ。私も好き。なので(なので?)ヒロインが割と初期からメロメロです。ロレンスかっこいい〜(教師として)からロレンスかっこいい〜(異性として)の経過はなかなか微笑ましいものでしたし、後半の割と重めな過去の話を聞いてもヒロインの男気と乙女パワーで解決しました。見てていらいらしない感じがとてもよかった。教師を見習いから互いを信頼するパートナーになる感じ、とても胸の熱くなる展開。過去に義理の姉に告白されて、どうしたらいいかわからなくなった時にヴァンパイアに襲われて、自分は片目をえぐられ、姉は目の前で殺された上に、それを姉の婚約者に恨まれ仕返しに両親を殺されるっていうマジモンのトラウマのせいで、そこから逃げるように感情を切り離してたら、いつの間にか感情表現に乏しい人間になってしまったと明かされた時にはどうしたらいいかわからなかった。過去のこともあるし恋愛する気は無いよって最初はヒロイン振りますが、そこは恋する乙女、泣き落とします。恋愛する気無いとか!ひどい!じゃなくて「これからもそうやってずっと一人で生きていくんですか」って泣いたのは個人的にはポイント高かった。この子本当にいい子なんだよなあ。全然関係無いゲームで、結局大人は泣く子供には敵わないって言ってたゲームがあったんですけど、本当にその通りだなと思いました。いまだに姉の婚約者には恨まれてて、ヒロインとヒロインの叔母、従兄弟を殺されそうになりますが、そこは腹を括ったロレンスとロレンスを得て最強になったヒロインが解決。ここの下り、結構重要な場面だったんですけど、そこを恋愛パワーで乗り切るのではなくて、ヴァンパイアハンターのバディとして、信頼するってところに焦点を当てたのはすごくよかった。恋人だから信頼するってわけでなく、今まで一緒に仕事をして積み重ねてきたものがあるから信頼するって感じ、すごくいい。その分アフターストーリー的なのは甘かったというか、ヒロインにも言われてますが、変態エロ教師って感じですね。塩こんぶ茶、この傾向ありますよね。ヒロインの婚約者問題もロレンスの人徳でスピード解決。ヒロインの婚約を決めたお偉いさんですら、お前ら見てていらいらするからヒロインの婚約話無くしてやるからさっさと結婚しろ、と言われる始末。でもまあ、感情を忘れた男がこんなにわかりやすくなって、家ではヒロインに甘えられるようになったのは本当よかったと思います。末長くバカップルやってろ。


マキューシオ=エテルナ
 人間やったから次はヴァンパイアかなって。ヴァンパイア側はロミオ(ほぼ主役)とベンウォーリオ(真相エンド持ち)とマキューシオしかいないのでほぼ消去式。
 って思ってたんですが、まんまと騙されました。どうだろう、狙ってたのかな、わからない、でも騙された!って思いました。もともとヴァンパイア界隈の連中はよくメタフィクション的(と表現していいのかわからないけど)なことを言っていたんだけど、マキューシオも例外じゃなくて、「僕はロミオの演じる戯曲の端役さ。別にさして必要の無い道化なんだ。でも幕が上がったらそれに準ずるしか無い」「(端役の自分は)ロミオと違って替えが効く」等々言っていて、このルートは端役が主役になる話なんだなって思いました。ヒロインと一夜を共にした次の日に「雲雀が鳴いてる」「違うよあれはナイチンゲール」(原作はロミオとジュリエットのやりとり)の下りをやってくれてたしね。でもあの三人並べられたら、とりあえず真相から遠そうなマキューシオからってなるじゃん?そんなマキューシオにそんなセリフ言わせるとかちょっとすごくない?まんまと罠にはまった気分でした。最後の方で、ヴァンパイアと人間の和平がなった!ってなった時にマキューシオが「これで僕はもうロミオの従者、ではなく、マキューシオ=エテルナ個人として生きてもいいんだね。」って言っていて、もはや役という呪縛からの解放かよって思いました。いや自分でも何言ってるのかわから無いけど。このセリフ、マキューシオっていう、原作でもロミオvsジュリエットでもメインじゃ無いキャラクターが言うから重いセリフだなって思いました。ロミオとジュリエットはタイトルの二人の人生の話だけど、他に出てきた役だってそれぞれの人生を生きているってことを再確認できました。これだから全てに焦点を当てられる乙女ゲームって好きなんだよな。
 それはそれとして、マキューシオ本人の話なんですけど、まあどうしようも無い男ですよこいつは。ヒロインの教師には「人生には引き返せる間違いもあるぞ」って言われるし元婚約者には「そんな人に負けたんですか」って言われるしヒロインも何回も「なんでこいつ好きなんだろう」っていわれるくらいどうしようも無い男だ。ヴァンパイア界の貴族で穏やかに見せてるけど実は好戦的で粘着質で子供っぽい男だよ。ヤンデレというよりは物騒な思想の持ち主で自分と駆け落ちしてくれ無いならヒロインの四肢もいで声帯潰して連れ去るとかいう男だけど、本当に自分は脇役(メタフィクション的な話ではなく)って考えが強くて多分ヒロインもそこにほだされたんだと思う。私もだよ。ヒロインがしたく無い結婚を迫られてると聞いてさらってくれる(頼んで無い)んだけど、さらわれた先でヒロインがヴァンパイアはどういう種族なのかを学んでいっていたのはやっぱりヴァンパイア攻略時の醍醐味でしたね。割とヒロインもマキューシオも親の仇の種族を好きになるなんてって葛藤していて、これだよ、こういうのが見たかったんだよ…って気持ちになりました。まあでもなんどもいうけど人間を小馬鹿にもしてたけどね。でもみんながロミオを愛す、家族は長男を愛してて、長男が死んだ時は母親に代わりにお前が死ねばよかったって泣かれる、だから僕は脇役に徹してロミオがみんなに愛されるように汚れ仕事を受けて道化のような発言をして、自分の役をなんとか果たしてるって言われたら誰が彼のことを責められるだろうか。ヒロインに好きだって言われた時もロミオじゃなくて僕を選ぶのかって言って泣き出すし、もう誰が彼を責められようか。あんたは主役だよ。発言はいい加減だしとにかく子供っぽく振る舞ってるんだけど、弟と妹のために必死になったり、家族を紹介したいって言ってきた時は結構ぐっときた。ギャップ萌えか?後半ヒロインの従兄弟に殺されかけるんだけど、ヒロインが好きだから許すって言っていて、自分の大事なもの以外はどうだっていいってスタンスの男が大事な人の大事な人まで尊重できるようになってたのは感動しました。「僕は彼女を愛している。だからその者の罪は不問に」っ手紙を送ったマキューシオは本当に貴族(?)。このシーン結構コミカルだったんですけど私は割と感動しました。
 最後はエテルナの当主の座を弟に渡して、ヒロインと結婚してまさかのキャピュレットの当主になるんだけど(原作ではマキューシオはキャピュレットの親戚という設定なのでそこに準拠したのかな)、それよりも自分が暴走して半殺しにしたヴァンパイアが義兄になって一緒に住むことになった従兄弟のティボルトの胃が心配です。あとね、一応これだけは言っておきたいんだけど、ご主人兼親友のロミオのお部屋で彼女とイチャイチャするの、やめたほうがいいと思いますよ。


パリス=ヴェロナ
 ヴァンパイアやったから次は人間かなって。ヒロインの婚約者です。キナくせえ大公に近い人物なのでもう少し突っ込んだお国事情聴けるかなって思ったけど、そんなことはなく、ヒロインの過去を匂わせる程度。
 パリスさんは現役の優秀なヴァンパイアハンターで大公の甥で次期大公候補でありながら温和な性格で優雅な物腰で人望が厚くて非の打ち所がない完璧な貴公子です。すでにキナ臭くない?どんなとんでも性癖隠してんだって思うでしょこんなん。まあ御察しの通り、実態は大公になるために完璧な自分を演じていて、実際は腹黒くてひねくれてる男でした。さらにヴァンパイアをいたぶって殺すことで生きている実感を得ることができる、とんでもねえやつなんだよ。突然のヒエラルキーの反転。まあね、お薬出しておきますので1日3回食後に飲んでくださいね。って感じ。大丈夫、この手の男はヒロインにハマったら幸せになれるから。そういう意味では心穏やかに見れました。「お前から夢も希望も全部奪って、胃に沿わない政略結婚させて絶望させてやる」とか言ってたけど、割と初期でヒロインにそんなにあなたとの政略結婚、嫌だと思ってないんだけどとか言われてあっという間に落ちてました。中盤で定期的にあんたはこんなに愛されてるのに気づかない傲慢な女だ、みたいに責められるんですけど、それはなんてことない、彼がとっくにヒロインが好きで、アプローチしてるのに気づいてくれないことに苛立っていただけでした。えっかわいい。伯父さんのエスカラスには気に入られているけど、家族に愛されたことがなく、愛し方も愛され方もわからない、愛を伝えられないんですって言いながらも勇気を振り絞って告白してくれたパリス、もうそんなん愛しくなるでしょ。ずっと親に道具として扱われて他人を信用してこなかったから好意を伝えることが下手くそで、臆病なんだと告白されたヒロイン、もう愛しさ大爆発してました。こんなんゆるすよ〜〜〜〜〜〜!とにかく思いが伝わってからほんと、お互い愛しさ爆発って感じで良かった。メインの話ではどちらかというとヴァンパイア問題とかよりは暴走したティボルトの話とか、街の情報収集が主で、あまり盛り上がりはないイメージでした。互いのことで忙しいからな。仕方ない。でも最後のプロポーズで「家族になってください」ってのはグッっときた。家族に確執があったからこそ、幸せな家族になりたいって言われたらそんなんさあ…幸せになろうなって思うよ…。その後子供が出来たって言った時も「嬉しいと同じくらい怖い」っていってたの本当に彼が本心を言えるようになったんだなって思うとなんか感動した。「絶対に自分と同じような目にはしないけど、僕は愛し方がわからないから」って言ったパリスに対して「大丈夫、私がこんなに愛されてるんだから」って返してて夫婦〜〜〜!!!っておもいました。絆エンドの名に恥じない絆、確かに見させてもらいました。


ロミオ=モンタギュー
 ついに来たよ真打。長年キャピュレットと戦ってきたヴァンパイアの王。人間との融和には反対してるらしいです。このゲームのタイトルの通り、これはロミオとジュリエットを元にしてるので、正史といってもいいのかもしれないルートではありますね。こいつ基本ずっとウィスパーボイスでした。疲れてんのかな。
 原作をもう少し意識してくるのかなって思ったんですけど、あまりそんなことはありませんでした。夜中に突然現れて「お前には経験が足りない」と言って鍛錬的なのをつけてくれたり、マキューシオはあんなに時間をかけて信頼をもぎ取ってなだめながら吸血したというのあっさり吸血したり、こいつ本当にキャピュレット嫌いなの?って感じでしたが、まあ過去のことを考えると仕方ない。実は小さい頃、主人公の両親が殺された夜、ロミオの両親も殺されていて、互いに正体を知らないまま一緒に泣いて慰めあったという過去があり、ロミオはその時の女の子がキャピュレットの娘だと気付いていたらしいです。まあ当たるに当たれないか。あれよあれよと会ってるうちに絆されて、ヒロインが婚約決まったと聞いて自分ちに拉致。マキューシオの時は本当に婚約から逃がしたろて気持ちで拉致してたけど、ロミオはあくまでも融和に反対するための人質として拉致したらしい。本当かな〜〜〜〜?そして異文化交流を経て、互いに恋に落ちます。そこで出てくる「どうしてあなたはヴァンパイアなの?」。ただこの男、舞台オタクなのでその前にも何回か原作ロミオとジュリエットのセリフの掛け合いして遊んでたんですよ。そのせいかまたこいつら引用してるよ…って気持ちになってしまったのが残念。セリフに乗せて告白する流れは本当最高で、「どうしてロミオなの」から月は不貞だから誓わないで~の有名なくだりを経て、「ではロミオという名を捨てたら私には何が残る?」って聞いた時にヒロインが「あなたには私が残ります」って言って思いを通じあわせたのは本当にロマンチックだったんだよ〜〜〜〜〜。だから似たようなとこを引用しまくらないでとっておいて欲しかったよ…。
 まあそうとはいってもやはりメイン。人間とヴァンパイアの融和って件では一番きれいにまとまってました。大団円エンドは文字通り大団円。満月の夜に人間とヴァンパイアが集まって大公が神父を務めて結婚式を挙げてるところはやっぱりこの二人だよ…。これが見たかったんだよ…って気持ちになりました。みんなでワイワイしながら祝われてるところ(マキューシオとベンヴォーリオは感動で泣いてた)は本当に平和の象徴のようで、ひと段落ついたなって気持ちでした。末長く幸せになってほしいな。


エスカラス=ヴェロナ
 あとは真相を回収していくだけだ!と意気込んでた時期もありました。しかし分かったのは今回の事件の犯人のみ。やはりこれは真相エンドを開けるしかないようだな。
 ヴェローナの大公、エスカラス様はなんていうか、人たらしのおっさんでした。きな臭いとか言ってすいませんでした。なんか気がついたらうまくやり込められてた感じ。しかも本人は天然でやってる節があるからなおタチが悪いわ。エスカラス様、マジで大好きですし、理想の上司なんですけど、やってくうちにあ〜マキューシオとパリスはエスカラス様のこーゆーところが嫌い(語弊)なんだろうなって体感しました。
 エスカラスはどのルートにもそこそこ絡んでくる(婚約者決めたのもエスカラス様だからそりゃそうなんだけど)んですが、このルートだと割と知られざるエスカラス様を見ることができます。思ってたより大人じゃなくて子供っぽかったり、わがままだったり。優しくて天真爛漫(400歳にこんな表現)のせいか、ヴァンパイアに襲われそうになった時も護衛のヒロインを守ろうとしてて、この方上に立つの向いてないよ〜〜〜って思った時期もありましたが、やっぱり遣り手ジジイ。優れた為政者の面も見せてくれました。このさじ加減が絶妙で、理想の上司!ってだけじゃなく、この人と恋愛して支えたいなって思えるような話でした。結果的に自分が甥のためにセッティングした婚約を自分がぶっ壊すことになってしまったので、パリスに殴られに行くか〜っていって憂鬱そうにいっていたのは可愛かったです。
 エスカラス様は人間とヴァンパイアのハーフのせいかご長寿なんですけど、短命な人間に囲まれて生きていたせいか、寿命の違う種族と生きていくというのはどういうことかというのを教えてくれるようなルートでした。他のヴァンパイア連中は基本初めての人間の彼女って感じなので、まあヴァンパイアの仲間たちもいるしなんとかなるでしょってスタンスなんですけど、人間だけに(ウィリアム、ベンヴォーリオはいるにしても)囲まれて生きていたエスカラス様は、もうこれ以上誰かに置いていかれたくない、私も人間として死にたいって気持ちが強くて、なんか切なかったです。不老長寿とか人によっては羨ましがられる話だけど、キレイごとで終わらせないで、集団に交わり切れない、周りの人間が持っているものを持っていない苦痛、アウトサイダーとして社会に受け入れられる虚しさ、恐怖が生々しくて、魅せてくれるなクインロゼという気持ちでした。置いて行かれる恐怖が強すぎてヒロインと恋愛してる時もなかなか踏ん切りつかないわ、寿命どうしようとうるさかったんですが、その度にヒロインが「意外と私の方が長生きするかもしれませんよ」とか「個人的には今が折り返しくらいでいて欲しいです。あと400年は生きてくださいね。」とか明るく返してくるので、だんだん悲観しなくなっていって本当に良かったです。今度はヴァンパイアのみんなもいるし、融和政策を通して彼が孤独でなくなったのは本当に嬉しい限りですよ。エスカラス様の200年来のご友人が黒幕なんですけど、大公権限で追放って形にして、定期的に手紙をもらっていて良かったなって気持ちです。散々やらかしまくったくせに偽名にGoodwill(親切、善人)って送っていた黒幕、いい加減にしたほうがいい。エンディングはそろそろロレンスが神父やんのかなって思ってたらパリスが神父をやっていて、意外だったけど丸くまとまって良かったのかもしれないな。なんか幸せそうで良かった。


ベンヴォーリオ=モンタギュー
 2018年お前真相エンド持ちって顔じゃないだろオブザイヤー受賞です。まあなんでヴァンパイア側というかベンヴォーリオが融和しようと思ったかが知れます。あとヴァンパイアの秘密。正直ベンヴォーリオルートが一番地獄かもしれない。
 ベンヴォーリオルートはヒロインがベンヴォーリオの助手になって融和政策のために奔走するんですけど、今までのヴァンパイア連中はなんだかんだ言っても人間と恋愛してもいいじゃ〜ん!いえい!って感じで血も吸わせろ〜ってきてたんですけど、彼は比較的というかなんというか、血を吸ったり、恋愛するのに抵抗があるタイプのヴァンパイアでした。過去に初恋の人間の女の子が流行り病で死んでしまってるんですけど、そのせいなのか元々の性格のせいなのかなかなか踏ん切りがつかない感じは見ててじれました。しかし恋する最強ヒロインジュリエットの前ではひとたまりもありませんでしたけどね。好きだって言ってんだろオラって勢いは他の攻略キャラよりも凄まじかった。まあなんだかんだで楽しそうだったのでいいんじゃないですかね。
 後半はもう真相エンドにふさわしい怒涛の暴露大会です。後述します。よく考えたなあ〜って感じだし、ベンヴォーリオも加害者で被害者だったので心底どんまいって感じなんですけど、他のルートではお父様の仇が〜とか結構騒いでたんですけど、そこに一切触れることがなかったり、今まで記憶(実は自分の父親とロミオの父親を不可抗力で殺したのはヴァンパイアじゃなくて自分だった)を思い出してもまあ、そうゆうこともあるよねって感じだったのに、突然罪とか言い出して、贖罪の旅に出るベンヴォーリオについていくって言ってた時はおいおいどうした?って気持ちにはなりました。でもアフターエピソードでは夜のハワイを満喫してて、本格的においおいおいおい贖罪はどうしたよ!?って感じ。まあ幸せそうなのでいいんじゃないですかね。あと全然気づかなかったんですけど、ヴァンパイアなのに褐色の肌なのおかしいですよね、ってウィリアムに言われて気づきました。褐色似合いすぎ。


ウィリアム=シェイクスピア
 医師で薬師。非攻略対象の黒幕。まあそうだろうよって感じではあります。全てのことの発端は彼にあるし、動き出してしまった物語は彼の手では幕引きができませんでした。この世界の彼は作家ではなくただの薬師なので。
 まず本当によく考えたなあと思いました。最初はシェイクスピアだしてどうすんだ?って思ってたんですけどね。ことの顛末はこうです。不老不死の研究をしていたただの研究者だったウィリアム=シェイクスピアはある日ひょんなことから不老長寿の薬を完成させた。しかし完成させた瞬間、薬が気化し、ウィリアムは昏睡する。目覚めたあと、この偉業を伝えようと村に出ると、そこは太陽に焼かれた焼死体と、今まさに焼かれてうごめく炎の塊と日陰で泣く女子共の阿鼻叫喚の地獄絵図だった。彼らはウィリアムの家で気化した薬(何らかの原因で変化した)を吸い、ある日突然ヴァンパイアになってしまったのだ。殺されることを危惧したウィリアムはその後ヴェローナから逃走、150年後に戻ってみると、そこにはヴァンパイアが繁栄し、森(モンタギュー領)ができており、ヴァンパイアと人間のハーフであるエスカラス様が生まれていた。再びヴェローナでヴァンパイアと人間の研究を始め、エスカラス様には貴重なハーフの生体サンプルとして自分もハーフであると偽り近づいていた。そんなこんなでエスカラス様に人間になれる薬を作ってくれだの、ベンヴォーリオに人間が病気にかからない薬を作ってくれだの言われて、二つ返事で了承して、秘密裏に人体実験を繰り返していたということだ。今回のヴァンパイアと人間の抗争も彼が裏で手引きしており(他国が人間の実験体を渡す代わりにヴェローナの融和を阻止しろと言われていた。)、文字通り今回の登場人物だけでなく、薬ができたその日から私たちはこいつの手のひらの上で踊らされていたのだ。ベンヴォーリオが褐色なのもウィリアムの実験に付き合っていたせいです。でもベンヴォーリオは自分から実験台になることを志願したからなんとも言えないんですけどね。まあよくあるマッドサイエンティストってやつです。でもエスカラス様にもベンヴォーリオにも打算以外の友情も感じちゃってて悪いやつだけど、悪いやつではないんだろうなって思いました。エスカラス様ルートでは追放されて終わりなんですけど、ベンヴォーリオルートでは容赦なく死にます。マキューシオもティボルトも死なないのに…。ベンヴォーリオルートでヴァンパイアは他国にいなく、なぜかこの地にしかいないって言っていたんですけど、まさかこいつがうっかり作っちゃったとは誰も思わんよ。
 てなわけで彼はしっかりロミオとジュリエットの原作者になったわけなんですけど、それだけじゃなく、原作では名もなき薬師の役をウィリアムに当てたのはすごいなって思いました。薬師になることで彼は原作者というアウトサイダーではなく、一登場人物になり得るわけなので。インサイダーになったウィリアムではこの物語を自分の理想通りに終わらせることができないので(事実どのルートでも彼の真の夢、真に望んだ結末は得られない)、彼もロミオとジュリエットの物語に翻弄されるひとりになる。神の視点であるはずの人物を、ここまで引きずり下ろすそのクインロゼの手法に完敗。ウィリアムがいてもおかしくないなって純粋に思いました。
 こいつ自身の性格はまあ、実験にしか興味のない穏やかな変わり者って感じです。でもエスカラス様とベンヴォーリオで飲んでた時は人間っぽかったし、やっぱり友人だったんだろうなって思うと、エスカラス様のために生きててほしいですね。この友情と願望を天秤にかけて最終的には自分の願望をとるあたり、クインロゼの血を感じました。こいつはギルカタールでも生きていけるよ…。



ティボルト=キャピュレット
 ヒロインの従兄弟。どのルートでも暴走して過激派に入ってマキューシオを瀕死に追い込む。根はいい子なんだけど、追い詰められると若さもあって暴走しちゃうんだろうね。本当にいい子で、暴走しちゃったのも母親がヴァンパイアにさらわれちゃったりしたからで、普段はヒロインにベったりの優しい子です。ヒロインの片想いしてるんですけど、彼は非攻略対象です。どんまい。でも幼い時から一緒に住んでた従姉妹のお姉さんってまあ恋に落ちちゃうじゃん。でもそれは幼い子の世界の狭さゆえの恋心だったりもするので、彼のことを考えると、一回失恋して、外の世界に触れたほうがいいんじゃないかとかね、思いましたよ。おおきなお世話〜!がんばれ。


バルサザー=アクイラ
 原作通りロミオの従者。しかし女の子。ツンデレ美少女だけど、ヴァンパイアのなかでは最年長。マッジでこの子可愛くて、ヴァンパイアルートの癒しでした。久しぶりにこんな可愛い子見た。声優さんの喋りもめちゃめちゃ可愛くて、彼女のルートがないのが悔やまれる。本当にスクショの手が止まらなかった。



ベルトルド=エテルナ、ベアトリーチェ=エテルナ
マキューシオの弟と妹。双子。エテルナ家はみんなそっくりらしい。兄も見たかったな…。個人的に兄弟がそっくりっての大好きなので、三人並んでるスチル見た時は興奮で死ぬかと思った。この二人もまた気が狂うほどにかわいい。かわいい。マキューシオ正規エンドだとベルトルドが家督を継いでマキューシオが婿入なんですけど、正直この二人がま〜〜〜〜かわいいので、嫁に行かせてくれって感じでした。私は彼らと一緒に居られるのならヴァンパイアになるのもやぶさかではないな。ベルトルドがちょっと気弱で、ベアトリーチェが気の強い妹なのももう黄金比じゃん…。マキューシオ、本当によくこんないい子を育ててくれたな…。本当に勘弁してくれ。かわいいが過ぎる。正直もっと出して欲しかったけど、それはもうマキューシオルートじゃなくなってしまうから我慢だな。それにしてもこの作品、バルサザーしかり、小さい子がめちゃめちゃかわいい。


 とにかく今回の作品をやって思ったんですけど、クインロゼは原作ありきのゲームを作るのが本当に上手いな。そうくるか〜!って新鮮な気持ちでできました。あとキャラクターも癖はあるけどそんなにじゃなくて、クインロゼをうまく希釈した美味しいゲームだと思いました。原作読んでやっても面白いし、読んでなくても楽しめる、そんなゲームです。でも論文読むとよりマキューシオのエモさとかキャラクター設定の深さと知れて楽しいので、オススメの論文置いておきますね。あとVitaも出てるのでよければぜひ。

参考文献
ロミオとジュリエット』におけるマキューショーの役割
https://ci.nii.ac.jp/els/contents110002936166.pdf?id=ART0003287520