アラビアンズ・ロスト 感想

アウトサイダーの総合デパート


みんな大好きQuinRoseの記念すべき第二作目。
アラロスはものすごい移植・リメイクされているのですが、今回私がやったのはPS2版とDS版です。この辺りは特に大きな違いは感じませんでした。システムやスチルの量は多少変わってたけどそれくらいです。他にもPSPにリメイク兼ねて移植されてます。

 

 


あらすじとしては犯罪大国ギルカタールのプリンセスであるアイリーンは「普通」の生活に憧れ、「普通」に恋愛をして「普通」に結婚することを夢見ている。しかし両親は娘の将来と安全を考えて国内の有力者5人を婚約者として選出した。だが犯罪大国の有力者ということは大悪党であり、間違っても「普通」の人ではない。婚約を回避したいアイリーンは両親に取引を持ちかける。25日間で自力で1000万G稼げれば婚約を強制しないというものだ。目的を達成するために周りを巻き込み利用し、利用され目標金額を貯めてみせる!というものです。

ではいってみよう。


【全体感想】
 全体としてはきっちりまとまってて好印象です。世界観も作り込んでいてアラのない感じ。しかしシリーズを意識しているせいか、前作を知っていないと分かり難いところもちらほら。PS2版だと前作「魔法使いとご主人様」から、DS版からはシリーズ3作品目になる「クリムゾン・エンパイア」からゲストが出てきます。魔法使いからのゲストはある意味アラロスでも主要人物なのでそこまで困らないのですが、クリムゾン・エンパイアからのゲストは唐突に出てくるので少し戸惑うかもしれません。ですがアラロスの登場人物も他作品にも出ているのでシリーズを通して楽しめる要素でもあると思います。
 EDも何種類かあるのでやり込めると思います。恋愛エンド以外にも特定の条件をクリアしないと見れないEDもありますのでぜひ探して欲しいです。私は偶然叩き出しました。結構偶然の産物で出てくるEDも多いです。恋愛EDはちゃんと恋愛していて幸せそうなのが個人的には泣くほど嬉しいです。アイリーンは全編通して普通な生活がしたい!と声高々に言っているのですが、最後は「まあちょっと相手は普通じゃないけど好きな人と恋愛してるのは普通だし好きだからいっか。」って結論付けてくれるのがすごく好感が持てます。ほんとにロゼヒロインは切に幸せに恋愛してくれ…
 ちなみにロゼといえば最近はアダルティじゃない?と言われがちですがそこまでじゃない印象。全員悪党のはずなんだけどな。ちょっと匂わすくらいでなんならアリスシリーズの方が露骨です。
 システム面も特に問題無し。なんて優等生なんだ…


【人物別感想】
アイリーン・オラサバル
 本作のヒロイン。「普通」になりたいプリンセス。少しすれた考えを持っているが基本はとても真面目。攻略キャラによってはお姉さんキャラにも年下キャラにもなります。一番最初に婚約者候補共の悪口をいうんだけど、とても輝いている。
 レベリングもできるのですが真面目にレベリングしていると後半はほぼ婚約者候補が手を出す前に倒せます。ばったばった敵をなぎ倒してがっぽがっぽ金を稼いで男を冷たい目でみるアイリーン…しびれますわ…婚約者候補5人が5人に「かわいいってキャラではないよな…」と言わしめたヒロイン。そのうち一人には俺よりかっこいいと言われていたし、実際カッコよかった。一生ついてきますぜ姉御。
 そんなかっこいい女アイリーンですが恋愛で不安になったり、悩んだりとかわいい面もちゃんとあります。普通になりたいけど、普通じゃないこの国を愛していないわけじゃないというのも個人的にポイント高いです。個人的に特に印象深かったアイリーンのセリフはロベルトルートの中の冒険者になるEDでの「変わっていく景色がたのしいと思ったのは最初だけだった。思い出すのはいつも熱砂の国だった。」です。なんかきちんとアイリーンは国を愛していたんだなと思いました。
 これ以上は止まらなくなるのでやめます。


カーティス=ナイル
 「女王様の愛人ってちょっといい感じじゃありません?」
 稀代の天才暗殺者。暗殺者ギルドのマスターでもあるらしい。
 平凡そうな男と称されていたが、一応イケメン枠。むしろイケメンと稀代の暗殺者という肩書きがなければ許されない行動ばっかでしたわ。汗を舐めたり頬噛んだり。他の連中もネジが1本抜けてる所はありますが、こいつのネジは常に5本抜けてます。
 そんななかなかなスタートダッシュを決めてくれたカーティス=ナイルだが、中盤では不器用なりに優しく可愛かった。「暗殺者なのにあなたといると気持ちが乱れる」と結構わかりやすく好意を寄せてくれました。あまりにも暗殺者として優秀すぎて散々周りの人には崇拝されたり都市伝説にされたり人間扱いされなかった男が人間らしく恋に悩んでいたのがとてもよかった。何にも執着したことなかった男の初恋を見守っている気分(しかし彼は28歳)
 恋愛エンドの結婚しましょうでも王位は継がないで裏でお手伝いします、表向きは結婚しないで女王として君臨して誰だかわからない子供を産んでくれって言ったのもびっくらこきましたがそれ以上に驚いたのは奴の服だ。二の腕が出でいる…28歳の男の二の腕とかきつくないか・・・?個人的には冒険者エンドのサイコパスここに極まれり、みたいなカーティスが好きです。暗殺者やめたので普通の男になりました!結婚!今仲良い男と絶縁しないとその男をころす!って追いかけてきたカーティス、普通の概念をもう一度学び直してほしい。


スチュアート=シンク
 北地区まとめ役の跡取り息子。主人公の幼馴染その一。
 カーティスの後に書くと肩書きがいまいちインパクトがないが、この男のルートこそQuinRoseの真骨頂である。
 スチュアート自体は美形で趣味が部下いじめの傲慢と高圧と性悪が服を着て歩いているような顔だけしか取り柄のない性格の悪い男だが、この男、過去が壮絶である。
 国で1,2を争う高官の父と国一番の美女の間に生まれた少年スチュアートは何不自由ない身分と美貌と才能に恵まれたが父にも母にも見向きされない幼少期を過ごしていた。父はもう一人の幼馴染で友人のタイロンの母に懸想し、家庭を一切顧みなかった為、国一番の美女でありながら夫に振り向いてもらえなかった母は、嫉妬のあまり自殺した。そしてその第一発見者はスチュアートであった。加えてタイロンの母も病死。この事件をきっかけに、スチュアートは父への復讐を決意し、幼馴染であるアイリーン、タイロンと決別する。アイリーンは勝手に決別されたことでスチュアートを恨んでいる(←イマココ)。
 なかなかのドロドロっぷりである。やるせねえ。さすがQuinRoseだぜ!そりゃ性格もねじ曲がるわ!まじでいままでは絶縁していたけれど、今回は特別ということで、期間限定ではあるが昔のように接しています。
 前置きが長くなったが、この男のルートのテーマは愛である。スチュアートの家庭を壊したものは愛ならば、スチュアートに新しい家庭を築かせたのもまた愛である。
恋愛エンドアイリーン「やっぱりこの男ほんとしょうもないけど、好き。許せないけど全部許そう」
私「愛だ」
駆け落ちエンドスチュアート「お前と結婚できないくらいなら親父への復讐なんてあきらめる」
私「愛だ。」
駆け落ちエンドで軟禁状態になっているアイリーン「でもこいつ私を閉じ込めて幸せそうだからいっか。」
私「愛だーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
 最終的に行き着く先が愛ゆえの許し。すごい、愛に満ちてる。まあ結局こじれにこじれまくった問題は愛ゆえの許しぐらいでしか解決はできないのだろうな。いいぞ、恋愛ゲームって感じ。恋愛してる。愛は人を救うな。Love is save the world.
 それにしても作中でぶっちぎりの性格の悪さを誇る男がアイリーンの初恋の相手であるからほんっと恋ってやってらんねーな。


タイロン=ベイル
 南地区まとめ役の跡取り息子。幼馴染その2。
 筋肉隆々の気のいい兄ちゃん。ヤのつく自由業。タイロンサイドはママが病死ってくらいで特に問題なくやっている。しかしスチュアートが距離をとったとき、一緒にタイロンも距離をとったらしい。スチュアートが強烈すぎたせいかアイリーンの中でイマイチ印象に残らない。がんばれ。小さい頃からアイリーンが好きだったが、アイリーンはスチュアートがすきだったため、あんまり相手にされなかった。書いてて涙が出そう。気さくでがさつな力持ち。洞窟の隙間に挟まってた。かわいそう・・・。
 タイロンルートは基本的にスチュアートとの決別。スチュアートはアイリーンはタイロンとくっつくべきと思っているのでスチュアート的にはアイリーンはちゃんとした男に任せたし、心置きなく父親にも復讐できるから万々歳なんだろうけど、タイロン的にははアイリーンはスチュアートとくっつくと思ってたからまーーーーーーー話がこじれるこじれる。この幼馴染ほんとどうしようもねーな。しかしスチュアートサイドは彼のルートをやらないとわからないので、タイロンルートに行くともう二人で仲良くしようって感じ。スチュも頑固だし、正直こじれにこじれて愛じゃないと解決できないところまできてるから決別してしまっても仕方ないかな…しかしタイロンのルートの感想のはずなのにスチュアートのことばっかになってしまっているからほんと彼はかわいそう…幸せになってくれよな

シャーク=ブランドン
商人。彼に調達できないものはない。そして医者も兼任している。人を殺す道具を調達した手で人を救う男。
アイリーンがちょっとわかりやすく年下の女の子みを感じさせるルート。世でいうところの常識人枠。悪党の国の常識人とか矛盾もいいところなんだけどね。
彼には体の弱い弟、メイズがいます。この男基本的に成り上がりなのでお金が大好きです。婚約者候補は基本的にいい立場、優遇されてる子ばかりなのですが、シャークは華やかな犯罪大国の底辺にいた時期がありました。まあギルカタールの男はみんな人生の底辺みたいな時代があるんですけど、シャークは特に、どうしようもなく地位が弱かった。幼馴染組みたいに社会的地位もなかったし、カーティスみたいに生まれつき何かに秀でているわけでもなかった。そのせいか、金持ちになっても貴族にはなれないし(まずファッションセンスがやばい、まじで)、アイリーンと恋愛するにしても別の意味でコンプレックスが強め。商人風情と姫さんなんてって感じ。しかしギルカタールの男なので手は出すがな。がはは。でも他の男よりは引き気味のせいかアイリーン様がおせおせ状態。押して押して押しまくったら突然押しかえされたって感じの恋愛(語彙の死)。上三人と違って穏やかな結婚生活が送れそうだ(コブ付きだけど)。なんかメイズとの話が割と中心になってくるんですけど、恋愛エンドは最高でした。病院の外にメイズがいるってだけで泣きそうだってんのに、生き生きと未来についてかたってる・・・・。神よ・・・。シャークとアイリーンの子供をねだってた時はなんとなくギルカタールの血を感じました。将来が楽しみだな。
 あとシャークに関しては、悪党観が結構好きでした。直接人を殺したりはしないし、自分の仕入れたものに関してなにも興味を示さない。だから俺は悪党なんだって言ってるシーンではなんそれかっこいい・・・結婚・・・としか言えなかった。ある種最前線にいない職種、生い立ち、立場なので他の4人とは違った視点でギルカタールを見ることができました。花火とかね、あのシーンはね、愛だよ。


ロベルト=クロムウェル
 はいきましたロベルト!!!!基本的に最初に書いた通りこの作品はアウトサイダーの総合デパートなんですけど、この男が一番わかりやすくアウトサイダーでした。彼だけ他国出身のギャンブラー。若くしてこの国一番のカジノオーナー兼ギャンブラーになったよ。
 ロベルトルートはこのゲームの中で唯一のアウトサイダー同士の恋愛であると言えるんだけど、他の人物同士の恋愛は基本的にインサイダーとアウトサイダーの恋愛、またはインサイド同士の恋愛なんだよ。多角的に見れば他の人物もアウトサイドなところはあるんだけど、どこからみても交わらないのはロベルトとアイリーンカップルだけだと私は思ってるんですわ。そもそもギルカタール出身というだけで、彼らはインサイドになり得るから、他国出身という設定を負っているロベルトがアウトサイダーと定義されるのはある意味当然なんだけど、じゃあ何をもって私はアウトサイダー同士の恋愛であると定義したかっていうと、もう話が長くなるけど頑張って聞いて欲しい。
 まずはロベルトのアウトサイドの面を見ていきたい。彼のアウトサイドの側面は二つ挙げられる。最初に挙げられるのは他国出身であることだ。特に大陸内でも異質な国であるギルカタールでは他国出身者が生きていくには難しい国である。そのため、国内の有力者(攻略キャラクター)もロベルト以外全員ギルカタール出身である。しかしその中で成功したロベルトはギルカタールの有力者としても例外であるし、ギルカタール人から見た外国人の枠組みからも逸脱している。これが一つめの側面である。二つ目は彼の出身国内での彼のポジションである。彼の出身国は農業大国であるが、彼はそこで自分は他の人間とは違うと自覚していた。大勢の兄弟に囲まれていたが、その考えを持っていたのは彼だけだった。この国での幸せの定義は畑を耕して、明日食べるものに困らなくて、年頃になったら結婚して大勢の家族と住むこと。しかしロベルトはそれを幸せとは思え無かった。彼が幸せであると感じたのはスリルを味わうこと。このことからロベルトは出身国から見てもアウトサイダーであると言える。次にアイリーンのアウトサイドであるが、これも二つ挙げられる。ロベルトの時と同じことが言えるのだが、ギルカタール人としては普通じゃない考え、でもギルカタール外の人からしても普通ではない。どちらも二重の意味でアウトサイダーを背負っている。だから最高に萌える。わかるか、萌えるんだ。しかもこの二人はお互い一番欲しいものを捨てようとしているんだよ。本来ならまあ妬み嫉みで殺し合いになってもおかしくない(おかしい)んだけど、あまりにも自分と違いすぎてこいつおもしろいわ〜ってつるんでたら最終的に恋に落ちちゃったとか可愛いがすぎません????かわいいが過ぎます。まあロベルトの人格の話をすると純粋にやべえやつだなって思うし、友達には欲しくないよね。それでもある種行き場のない正反対とも言える二人がお互いの違いを受け入れて歩み寄ってるところを見ると愛だなって思えて個人的には一番楽しかったです。って思った矢先に冒険者エンド見るとやっぱりこいつはやべえやつだなって思いました。カーティスとは別ベクトルにやばい。でも正直一番輝いていた気がする。


ライル=スルーマン
 この話の一番の被害者枠。クインロゼ恒例。ヒロインの家庭教師。実はアイリーンの取引が失敗した時の結婚相手でした。これ最初から伝えてたらもっと話は早かった気がする。何度も私は普通になる!親の決めた婚約者(ライル)なぞごめんだ!普通の男と結婚する!って目の前で言われた挙句普通じゃない男にかっさらわれてるのあまりにかわいそうでは…?まあでも某親友のロベ◯ト=クロ◯ウェル曰く、近くにいたのに手を出さなかったお前が悪いということらしいので…。世知辛い世の中。
 それはそれにしても、ライル先生ルートのアイリーンは可愛かった。特に達成できなかったエンド。婚約者候補(上記五人)と誰とも結婚したくない、私はライル先生がいいのに…と悩んでる姿はもう100点のヒロイン。かわいい。そしてライル先生は性格が悪い(今更)。エンディングはどれもまあ幸せそうでよかったなって気持ち。それにしてもライル先生って家庭教師、メガネ、鬼畜となんかもう満点の攻略キャラだよね。古き良きを感じる。なんとなく個人的には一番安定してる関係なのかなとは思いました。幸せになってくれよな。


その他愉快なゲストキャラクターたち
マイセン=ヒルデガルド
魔法使いとご主人様、クリムゾン・エンパイアからきた金貸し下衆魔法使い。シスコン。魔法使いシリーズはやってないのでちょっと詳しくは言えませんが、こいつに恋しても不毛かなって思いました。婚約者候補を連れずにレベルが上がるとどこからともなく現れて祝ってくれる。こいつも大概ロクでもねぇなって思ったけど、パンッパカパーーン!の言い方がうざかわいくて全て許した。不毛と不憫とカラ元気と性悪を集めると彼になる気がする。


ミハエル=ファウスト

地獄の公爵の息子で悪魔。マイセンと契約してる。こいつはクリムゾン・エンパイアでフィーバーするんだけど、やっぱり不毛なのでこいつにも恋しないほうがいいと思う。私が金を払うのでアイリーン様返して。マイセンが大好き(大好きじゃない)で定期的にマイセン芸を見せるんだけど、面白い云々より怖いなって思います。シャークにそそのかされて(語弊)勢いでマイセンと結婚しようとしてた時はなんかもう、さすがにマイセンがかわいそうになりました。アイリーン返して。

ユウゼドリアマナトナデナラドナ=フィオレントナグリア
由緒ある名前だが省略してユウ。黄色いものを集めてる商人。多分この人一番いい奴なんじゃないかな。ユウとの商人エンド、穏やかでとてもよかった。ユウゼドリアマナトナデナラドナのしゃべり方がまーーーーーーかわいくてかわいくて。一人でレベル上がった時最後に祝いに来てくれた時は結構嬉しかった。取引最終日、もう次の国に行くから会えないって悲しんでくれたり、また会えるよね!って言って去っていったりとにかく嫌いになる要素がなかった。アラロス発祥のサブキャラで一番好きです。

ランビュール=ダヌンツィオ
カーティスの弟子。カーティスへの熱い殺意をクリムゾン・エンパイアで聞いてたのでついに殺すのかなって思ったけどまだ無理そうです。唯一基本的に性根が腐ってないやつだと思う。

ランヌ=バルソーラ
クリムゾン・エンパイアからきた、マイセンの先生。なんか鏡から出てきた気がする。クリムゾンの舞台になってる王城にある日突然住み着いて迷惑かけてるのにギルカタールの王城でも迷惑かけてんのかこいつ…という気持ち。このマイセンあってこのオランヌあり、といったところか。本当に遊びにきただけ。


以上、感想兼雑記でした。まとまってなくて申し訳ない。アラロスは個人的に好きなクインロゼシリーズ四天王に入るお気に入りのゲームでして、私の出身国でもあります(妄言〜!)。続編も出てて、ちょいちょいやってるので機会があったらそっちももそもそ書いていきたいなあと思っています。ロベルトルートはね、そこそこまとまってるノベライズも出てるので機会があったら是非読んでください。アラロスノベライズのなかで一番よくできてます。まずはそこからでも。